大野智は私のオム・ファタール

オム・ファタール。運命の男。

または、女を破滅させる魔性の男。

 

あれは中学生の時。花より団子2が放送されていた頃。

テレビでジャニーズグループ「嵐」の姿を見る機会が増えた。

めざましテレビで「Step and Go」のメイキング映像が流れた時、メンバーたちから弄られながらも穏やかに笑う大野智の姿が、とても印象に残っていた。

 

その後しばらくして、母の知り合いからチケットを譲り受けて、母と共に嵐のデビュー10周年記念コンサート「5×10」に参戦した。

今考えると、初めてのコンサートが「5×10」だったなんてとても運が良かったと思う。

 

そこで私は本格的に大野智に魅せられ、ファンとなった。親しい友人に大野担がいたこともあり、彼への思いは増すばかりだった。いつの間にかその友人よりも大野智にのめりこんでいた。

 

受験生になった。第一志望の高校に合格した私は、母にジャニーズファミリークラブに入る許可を得た。まあ、第一志望に受からなくても入れさせてくれたとは思うけど。いわゆる合格祝いというやつだ。

 

高校生になると、中学生の頃よりも嵐が好きな友達が増えた。偶然仲良くなった子たちの中に松本担と二宮担がいたのだ。部活には同じく大野担がいたし、三年生の時には二人の櫻井担とも友達になった。今思うと相葉担とも仲良くなりたかったな。

 

その頃がピークだったと思う。私は取捨選択しながらも、自担のかっこいい写真や可愛い写真を求めてジャニーズ誌、テレビ誌、映画誌、ファッション誌を買い漁った。毎週、嵐の冠番組を楽しみにしていた。嵐の宿題くんひみつの嵐ちゃんが放送終了した時は本当に悲しくなったものだ。

 

大学生になると、少し落ち着いた。この頃から二次元ジャンルにも手を出すようになっていたので、金銭的な面や時間的な余裕からも、雑誌などは一部のものだけを手に取るようになり、冠番組も気になる時だけ観るようになった。

 

そして三年前。もう今更筆舌するのも面倒なので詳細は省くが、自担に恋人がいることが発覚した。

まあ別にそれはいい。

問題は、お相手がいわゆる匂わせ写真をSNSに投稿したり、自担が彼女の犬の絵を描いてTシャツにして個展で売ったりしたこと。これはあとで知ったことだが、自担は彼女の名前をアナグラムにして作品集のスタッフたちの名前の中に紛れこませてもいた。作品集はなぜかまだ手元にあるが、もう開く気にもなれない。

 

当時、私はこれに大変ショックを受けた。

アイドルだって恋愛をしていいし、むしろ結婚してその貴重な遺伝子を後世に残してほしい。でも、ファンには隠して。隠して隠して隠し通して、結婚する時にだけ祝わせて。そう思っていたのだ。

結局、彼はその後「彼女とはただの友達で、もう二度と会いません」と、「ファンのために別れました」と言っているのも同然な謝罪をした。

彼のアイドルとしての責任感のなさに失望した私は、大野智から担降りした。

だけど、彼への情熱が減っただけといった感じで、嫌いにはなりきれなかった。だからファミクラには入ったままだったし、嵐のアルバムが発売されれば初回盤を買ったし、たまには彼らの出演するテレビ番組も観た。

 

今思うと、わがままだなと思う。アイドルだって人間だ。理想を押しつけているのは私たちの方。好きにしていいじゃん。そう考え方が変わっていった私は、以前ほどの熱量はなかったにしろ、またなんとなく彼の姿を追うようになった。紅白は毎年最初から最後まで観たし、Twitterを見ていてTLで嵐や大野智の話題が上がるとちょっと嬉しくなることもあった。4回行ったコンサートのうちの1回は、担降り後の「Are You Happy?」だ。

 

そうやってゆるゆるとファンを続けていたある日、オタクとしてとあるジャンルのイベントに出た日、アフターの待ち合わせ前に嵐の活動休止を知った。

衝撃を受けて固まる私を、アフターに参加した他の人たちは慰めてくれた。

一次会では二杯のコロナビールと一杯のノンアンコールカクテルをチェイサーに三杯のテキーラショットを一気に呷った。飲まなきゃやってられねえと思った。

二次会のカラオケでは、元々予定していたDVD鑑賞を終えてから(その作品への感動も相まって)とうとう涙が止まらなくなり、みんなに見守られて号泣しながら「Monster」と「A・RA・SHI」を歌った。

今更だけど「Monster」の歌詞やばいね。大野のドラマのタイアップ曲だし。おかげで歌唱力には結構自信があるのに大勢の前で下手くそな歌を披露してしまった。いつかリベンジしたい。(無駄に負けず嫌い)

 

翌日。私は仕事を休んで心を落ち着かせ、一晩前の会見を見た。

始めは、「こんなにたくさん喋ってる智は初めて見たかもしれない」と呑気にそんなことを考えていた。

それから、翔くんの言葉にまた涙を流したり、会見でも堅苦しい空気になることなく笑い合う彼らを見て少しだけ和んだりして、どうにか会見を見終えた。

その時の私の感想は、「まだ受け入れられないが納得は行った。これから二年間悔いのないよう応援していくしかない」だった。

 

そして私は、担降りしたはずだったのに、また大野智のことが大好きになっていたということに気付かされた。

 

会見を見ていて一番心に残ったのは、大野智の「休みたいと思ったので、けじめをつけて辞めるべきだと思った。だがメンバーと話し合った結果、『一旦休止』という形にしてもらえた」というような言葉だ。

ファンとして、彼のその言い方に少し安心していた。心からアイドルを二度とやりたくないと思ったわけではなく、また復帰する可能性を残しておきたいと思える程度には、嵐やファンのことを大切に思っているのだと。

でも、私は彼の「辞めたいと思った」という言葉を何度も聞いている。

泣きながら「辞めたいと思ったけど、この五人だから頑張れた」と言う彼の姿を、何度も何度も見ている。

だからきっと、彼は本当に嵐のメンバーのことが大好きなんだと思う。他の四人もそう思っていて、ここまで頑張ってきた。今回はそんな大野の「辞めたい」という気持ちに真摯に向き合って、五人でなければ嵐ではないという思いの元、結論を出した。

でも、それって私たちファンにしてみればあまりにも悲しい。

私がずっと好きだったアイドルは、ずっとアイドルを辞めたいと思っていたのだ。一人の男がやりたくないことをし続ける姿に感動して、魅了されて、狂っていた。何それ。どういうこと?今でも何と言えばいいのかよく分からない。

 

活動休止まであと約二年間。随分と余裕のある告知だ。ありがたい。

20周年コンサートも公演を増やし、以前からのファンを考慮した抽選システムを採用。それもありがたい。

何より、素早く会見を開き、暗い雰囲気になることなく終わらせてくれたことも、よかったと思う。

彼らの対応に関しては基本文句はない。そうじゃなくてこうするべきだった、という意見はない。

 

でも冷静になると、ちょっと違う考えも浮かんできた。

先程にも言った通り、嵐のメンバーはお互いをとても大切に思っている。当然といえば当然だけど、彼らはファンよりもメンバーの方が大事なのだ。だから、ファンにとって最善の選択を取るのではなく、メンバーにとって最善の選択を取った。

「辞めたい」と言う一人のメンバーのために、辞めたいとは思っていない四人が歩み寄り、活動休止という結論を出した。別にそれが悪いって言いたいわけじゃない。それでいいと思う。いいよ。本人たちがそう決めたんだから。五人じゃなきゃ嵐じゃないって、本人たちが言ってるから。それが正義だ。

けれど、四人のファンは可哀想だな、と思う。

「嵐」としては綺麗な終わり方だ。だけど、私が嵐の中で一番大野智が好きで、彼の活動に注目していたのと同じように、他のメンバーそれぞれのファンは、グループとしてだけではなくそのアイドル本人への強い想いがあるはずだ。担当の活躍を、一人のメンバーの言葉によって終わらせられるのもまた酷だと思う。

でもやっぱり、だからといってどういう結論を出せば正解だったのかは分からない。

 

会見で「無責任なのではないか」と言った記者がいた。たくさんの人が怒っていたが、私はその質問を不快には感じなかった。そう思う人もいるだろうなと思った。

今までを振り返って、無責任かそうじゃないかで言ったら、私も大野智は無責任だと思う。

だって、今まで何度酷い記事を見たと思ってる?大麻とか、3Pだとか色々あった。前は本人がやってないと言っていたから信じていたけど、あんな写真まで撮られてて本当に何もなかったとは正直思えない。

あの熱愛報道だってそうだ。自分の愛する彼女のペットの絵を描いて、Tシャツにして売って、コンサートに着てきてほしいだなんて。始めから堂々と付き合っていたら違った反応をしていたかもしれない。でも隠して付き合ってるのに、隠しきれていない上に、彼女のために描いた絵を大量のファンが身につけているところを見て喜びたいだなんて。

ずっと辞めたいと思っていて、それをファンたちの前で何度か口にしながらもアイドルを続けてきた。それを聞いてファンがどう思うのかなんて考えずに。

無責任でしょう。彼は「アイドル」なのに。

 

だからといって、彼を悪者にしたいわけじゃない。

彼が何を思おうと、何をしようと勝手だ。人間なのだから。犯罪でもしない限りなんでも。

辞めたいと思うことは自由だ。世の中には辞めたくても辞められない人もたくさんいるけど。でもそれは仕方がない。彼はそれが許される環境に生きていた。

 

何が言いたいのか自分でも分からなくなってきた。

まあ元々心の整理をしたかっただけで、この記事に深い意味も何もないんだけども。

 

大野智は凄まじく魅力的な人だ。

最高に歌が上手くて、最高にダンスが上手くて、最高に面白くて、最高に可愛い。

一度嫌になったはずなのに、憎みきれなくて、結局いつの間にかまた好きになっていた。

何度も私を幸せにさせては、何度も地獄へと突き落とす。

それでも大野を嫌いになれない私は、2020年、嵐が活動休止するまで、今までと変わらず彼らを応援していく。

 

大野智は私のオム・ファタールだ。

これからもきっと、真の意味で彼から離れることはできないのだろう。